ガヤガヤガヤ。


 廊下にいても「うっしゃ自習だ!」「何して遊ぶー?」と教室内の楽しそうな声が聞こえてくる……って、コウも職権乱用したのかよ!


 呆れながらガラリと音を立ててドアを開けると、生徒たちの視線が一斉に集まった。


 ──好奇、嫉妬、嫌悪の目。


 けれど不思議なことに誰も何も言わず雑談を再開させたので、気にせず自席に向かえば。



「あ、おはよ。やっと来た」

「おはよっス!」

「おはよー、さっき荒野が探してたよ!」



 近くの席に座る信号機たちが笑顔で話しかけてくれた。


 みんなにつられて「おはよ」とあたしも笑顔で返して席に着く、と。



「そうだ。八永って呼んでもいいスか?」


「……いいよ」



 俺らのことも呼び捨てでいいっスから!と無邪気な笑みを浮かべる太郎に許可を出す。やっぱり許可制なのか……。



「……なぁ。昨日から気になってたんだけど、八永って荒野の弱みでも握ってんの?」


「え、急になんで!?」


「だって、「あの荒野に“さん”付けで呼ばれてるじゃん!」



 和樹の言葉に「ずっと敬語なのも気になってたんだよねー」と被せてきた香。


 コウがあたしに敬称や敬語を使う理由……



「ごめん、覚えてないや。コウとは昔からの知り合いなんだけど、最初から敬語だったしなー」



 もともと知り合いだったんだ!と三人は驚く。


 え、まさか転校してすぐ教師の弱みを握るヤバイ奴だと思ってた?