「もう行くね」
教室には行きたくないけどコウが待ってるし。
重たい腰を気合いで上げたその時、「ちょっと待って」と再び想乃に呼び止められた。
「今日の放課後って空いてる? 予定がないなら俺たちの倉庫に連れて行きたくて」
倉庫か……“天色”のと何が違うんだろ。
「わかった。放課後ね」と行くことを伝えて、あたしは2−Aの教室に足を向けた。
──────…
二階への階段を下りきったところに、今は授業中のはずのコウが腕を組んで立っていた。
彼は下りてくるあたしに気づくとキッと眉尻をつり上げる。
「屋上で何してたんですか」
久しぶりに怒ってるコウを見た。前は暁たちと馬鹿みたいなことばかりしてよく怒られたっけ。
「姫の件をちゃんと断りに行ったんだけど──」
「だけど?」
「…………姫に、なりました」
昨日のこともあり、なんとなく言いづらくて弱々しい声が出た。
最初は断るつもりだったんだけどな……



