「姫になれ」


「……」



 今日初めて発言した輝。


 この銀髪は人の話を聞いてなかったのかな。



「だから理事長と、」


「姫になれ」


「それと荒野せ、」


「姫になれ」


「……二人が守っ、」


「なれ」



 もう、しつこい!!


 しかも『なれ』って何様だよ! 省略すんな!



「もう諦めた方がいいと思うぜ?」


「こいつ、言い出したらまじで聞かねえよ〜」



 ニタニタと嫌な笑みを向けてくる茜に、ゆったりとした足取りで輝の隣に座りに来た藍。


 何が面白いのか、二人してゲラゲラ笑いながら輝の頭を叩き始めた。


 バシン!バシン!と良い音が響く輝の頭。



「……姫になれ」



 こんな状況でもお構いなしかよ。すげぇな。


 めっちゃ嫌そうな顔をしながらも『姫になれ』を連呼する輝。正直言って鬱陶しい……。



「俺も諦めた方がいいと思うな。こうなったら輝、本当にずっと言ってくるから」



 想乃に「しつこい男でごめんね」と困った顔で謝られた。


 本当にしつこい奴だ。こんなにハッキリ断ってるんだから、そろそろ諦めてほしい。



「ていうかさ、姫なんていない方がいいでしょ」



 狙われることが増えるだけじゃん。


 あたしはもう一度、“理事長と荒野先生がいるから大丈夫”と。



「それでも雨貝さんが狙われることになったのは、俺たち“閃光”が原因だから」



 急に真剣な表情になった想乃。


 “守る”という条件を譲る気はないようだった。