「……でも最近、なぜか姿を消した」




 想乃が眉をひそめてボソリと呟く。


 その言葉で他のみんなの表情も暗くなったけど、あたしは何も言えなかった。



「だから俺たちは彼にもう一度会って、あの時の感謝を伝えたいんだ」



 ……伝えた言葉は“彼”のもので、それを彼らに教えたのは単なる気まぐれだ。


 感謝されるようなことなんて何もしてないのに、そう言った想乃の瞳は力強く真っ直ぐで、耐えられず目を逸らしたくなった。



「雨貝さんは“雨天”のことで何か知ってることってある?」


「……いや。理事長たちの親友って話も初耳だし、族名とか有名なことしか知らないな」



 知ってるも何も本人だけど。そう口から出そうになった言葉をぐっと堪えて誤魔化す。


 そんな嘘に表情を曇らせる彼らを見て胸が痛んだ。



「そうだよね……話が脱線してごめん。それで姫の件なんだけど──」



 あ、そうだった。