──ガチャ。


 ドアを開けると、まだホームルーム前なのに五人とも屋上にいた。


 え、早くない? 屋上が溜まり場だって言ってたから来るまで待つつもりだったんだけど。



「雨貝さん!」



 あたしに気づいた想乃が爽やかスマイルで手招きしている。


 真琴はあたしを見た途端すみっこに移動したし、藍も彼について行ったから、近くにいるのは想乃と茜と輝。



「姫の件なんだけど……」



 想乃の隣に座れば、彼が言いづらそうに話を切り出した。



「そのことなんだけど、理事長とかコウに……じゃなくて荒野先生に守ってもらうから大丈夫だよ」


「は、お前あの荒野とも知り合いなのか!?」



 突然、茜が大声をあげた。


 うとうとしていた輝はパッと目を開き、隅にいた真琴と藍はバッとこちらを振り向く。



 ……いやだからさ。



「あのってどの!?」



 こいつら、暁だけじゃなくてコウにも“あの”をつけている。


 しかもそんなに過剰に反応されたら嫌でも気になるって。



「理事長と荒野先生には、ある有名な親友がいるんだ」



 昨日から疑問だったことを、なぜか目を輝かせている想乃が教えてくれた。


 でも……親友? あいつらが親友なんじゃなくて、あいつら‘に’有名な親友?


 もしや荻荘組若頭のクモのことじゃないかと内心焦っていれば、




「あの伝説の天色初代総長、“雨天”だよ!」




 想乃が眩しい笑顔で予想外の名を口にした。