「はぁー……ねむ」



 昨晩、組のみんなに誘われて、遅くまで飲み会に付き合わされた。なんでもあたしが帰ってきたことへのお祝いらしい。


 まぁ飲み会といっても、あたしはいつものように父さん達に止められてお酒は飲めなかったけど……。



(そういや昨日、セツはいなかったな)



 飲み会には昨日家にいた人たち全員が参加したはずだが、彼の姿は見当たらなかった。


 あまり家には帰らない奴だし仕方ない……と残念に思いながら、学校に行く支度をして家を出た。





 ──櫻木高校の正門前。



「なぁ、あれって噂の転校生じゃね」


「ほんとだ。黒髪青メッシュの二年だよな?」



 いつもより早く家を出たから、登校している生徒の人数は少ない。それでも校舎に向かって歩く数人の視線がチラチラとあたしに刺さる。


 暁が言ってた通り、“転校生(あたし)が閃光の姫”という噂はすでに広まっているようだった。



(……先に屋上行くか)



 仮の姫になる話は一度断ったけど、話の途中で暁と逃げ出したから多分まだ話は終わってない。


 また五閃の誰かが教室に押しかけてくるのは嫌だし、もう一度はっきり断っておこうとパーカーのフードを被って屋上へ向かった。