「……は? って、違いますよ! あたしが族から狙われてるから守ってくれるってだけです!」


「へぇ」


「いや納得してないですよね!? ていうか何でそう思ったんですか……」



 明らかに納得していない様子の父さんにそう問えば、「ただの勘だ」と真顔で返された。


 ただの勘かよ!!



「まぁ、姫になるかはお前次第だが────もし何かあっても、俺らがアイツから匿ってやる」



 そう言って父さんは、再び煙草を口にくわえて白い息を吐いた。


 
「……優しすぎますよ」



 暁とコウだけじゃない。父さんもクモもこの家に住む組員たちも、みんなあたしに優しすぎる。


 その小さく呟いた言葉に、父さんは「当然だろ」と平然と言い切って。



「お前は荻荘組の人間で、俺の娘だからな」


「……ありがとう、ございます」



 深く頭を下げて、ぎゅうっ。握りしめた両拳に自然と力が入る。



 組の人たちは父さんを本当の親のように慕っていて、父さん自身も彼らを自分の子のように大事にしている。


 だから────



 荻荘組の“若頭補佐”であるあたしも、父さんの娘というわけだ。