長い長い廊下を抜け、父さんは私室の襖を静かに開けた。畳敷きの部屋の中央には黒の座卓が置かれ、壁には古い書画が飾られている。
父さんは座卓を囲む座布団の上に胡座をかいて座り、クモはその近くに立った。
「座れ」
あたしは父さんと向き合うように座布団の上に正座する。暁とコウは隣に立っている。
……三人のことが気になるけど、父さんが何も言わないから居てもいいってことだ。
「会えたか」
あたしが訊くより先に、父さんが口を開いた。
やっぱり狙いは“彼ら”だったか。
「会いました。それで姫になれって言われました」
あたしは勝手に“五閃”と会わせようとした父さんに少し腹が立っていて、語尾を強調して答えた。
「「姫?」」
父さんとクモの驚いた声が重なる。
常に無表情の父さんが驚く姿とか超レア……!って、喜んでる場合じゃない。
本日三度目の説明だから面倒くさくてだいぶ端折ったけど、彼らに『姫になれ』と言われた理由を二人にも説明した。



