「ただいまー!!」



 立派な瓦屋根の門をくぐり、あたしは大きく息を吸って玄関先で叫んだ。



「お嬢! 二日ぶりっすね!」

「初めての学校はどうだった!?」

「雨さんいないから暑苦しかったんすよー!」

「おい、お嬢が困ってんだろ!!」



 屋敷の中にいた厳つい組員たちがぞろぞろと集まってきた。年齢はバラバラで40、50代の層が特に多い。


 確かにごつい男ばっかで暑苦しそう……と哀れみを込めた視線を送れば、「そんな顔しないで下さい」と苦笑された。ごめん。


 ──ちなみに。組のみんなはあたしが男装をしてること、つまりあたしが“女”であることを知っている。



 ……ていうか、



「“お嬢”って呼ぶなっつってんだろ!」



 あたしがこの家に来る前からいる組員たちは、あたしのことを「お嬢」と呼ぶ。


 新しく来た組員には“お嬢以外で呼んで”と伝えてあるから名前で呼ばれてるけど……。


 お嬢と呼ばれるのが嫌いなあたしはいつも呼ばれるたびに暴れていた。



「おい待てやぁああ!!」


「うげっ! ちょっとお嬢落ち着け!」


「一回その椅子置いてください!!」



 だからこういうやり取りは、みんなとの日常みたいなもんだ。