車が動き出す、と。
「相変わらず綺麗だな。その髪と瞳の色」
暁がバックミラーに映るあたしの姿を見て言った。「男装も似合ってる」とつけ足して。
今はウィッグもカラコンも外している。
前を向けば、バックミラーに映る自分の姿が視界に入った。
異質な金の髪に、青の瞳。
そして短い髪を下の方で小さく結って、化粧で眉を少し濃くして、5cm以上の黒の厚底スニーカーを履いて……
全身黒ずくめの格好の“男装”をしている。
──なぜか?
髪や目は、父さんに『家ではありのままの姿でいろ』と言われているから。男装をしてるのは、父さんの家に行くから。
その一言に尽きる。
────────…
車に揺られて約1時間。途中で県境を越えた。
暁の「着いたぞ」という声と共に車から降りて、目の前の荘厳な純和風の屋敷を見上げる。
その表札には────…
“荻荘組”
ここが父さんの家、荻荘組の本家だ。



