「「「キャアァァアア!」」」




 っ、うるさっ!


 なんだなんだと黄色い歓声があがった方に顔を向ける、と。



「黒髪青メッシュの転校生っているか〜?」



 昨日屋上にいた藍髪、藍が教室のドアから顔を覗かせていた。


 ……それって絶対あたしのことだよね。わざわざ何の用だろ、と疑問に思っていたら。



「は? なんであの女が」

「藍様に馴れ馴れしくすんじゃねーよ!!」

「転校生のくせに……っ!」



 そんな教室にいる女子生徒たちの声が聞こえてきた。


 馴れ馴れしくって……あたし何もしてないんだけど!?



「あ、いたいた」



 端っこにいるあたしに気づいた彼が、こちらに向かって歩いてくるのが視界に入った。


 ちょ、さっきから周りの悲鳴がうるさいんだから来んな!



「ちょーっと、こいつ借りてくな〜?」



 嫌そうな顔をするあたしのことは全く気にせずに、すぐ近くまで来た彼は、そう信号機たちに声をかけてからあたしの手首を引っ張る。


 その瞬間、周囲の悲鳴がより大きくなった。





──────…



 それから、藍はあたしの手首を掴んだままスタスタと無言でどこかに進んでいく。


 目的や行き先について尋ねても「あとでなー」と雑に返されるだけで、何も教えてくれなかった。



 …………痛い。



 パーカーの上からだけど、かなり強く握られている。


 振り払って逃げたいけど……それはこいつが許さないんだろうな。



(……勝手な奴)



 そう思いながらも、抵抗した方が面倒くさいことになりそうだと感じたあたしは、大人しく彼に引っ張られておいた。