「……“ウテン”なんて、聞いたことねぇ。どっか族に、入ってんのか」


「まぁ。つい最近にできた族だけどな」



 ちょうど一週間前のことだ。きっと族名を言っても知らないだろう。


 俺は再び救急車を呼ぶかと尋ねたが、血まみれ男に“みんな意識はあるから”ときっぱり断られた。


 なんだ、他の三人も意識はあったのか。



「なぁ。お前らなんで喧嘩なんてしたんだよ?」



 そう訊きながら、ボロボロになった彼ら一人一人に視線を移す────が、五人とも口を閉ざしたままで一言も話そうとしない。



「何か嫌なことがあって、大人数相手に突っ込んで負けたとか?」


「、っ」



 血まみれ男の目がわかりやすく揺れた。図星か。


 この大量の血は大人数を相手にした証拠だ。それでも誰も気絶はしていないのだから、相当強いのかもしれない。




「じゃあ、俺がもっと強くなれる“秘策”を教えてやるよ」




 俺はその日、気分が良かった。


 だからだろうか。それとも、一緒に族を立ち上げた“五人”の大切な仲間たちの姿と重なったからか……




「守りたいものを見つけろ。



 ────そのためだけに、力は使え」




 俺がこいつらに、“彼”の言葉を伝えたのは。