「……今日から授業か」



 昨日は屋上でカラフル集団に会った後、あたしは自己紹介だけしてすぐ家に帰った。今日はちゃんと授業も受けなければいけない。


 サボりたい気持ちを我慢して、よし!と気合いを入れてから家を出た。





 ──櫻木高校の校門前。


 昨日は走るのに夢中でよく見てなかったけど、校舎は真っ白な壁で統一されていて結構キレイな外観。


 でもさすがは不良校。駐輪場に(おびただ)しい数のバイクが停まっていた。



「アメさん!」


「え、コウ?」



 正面玄関から校舎に入り上履きに履き替えていると、なぜかコウに呼ばれた。小走りでこちらに来て「担任なので教室まで案内します」と。


 そうだった、コウってあたしの担任じゃん!


 やっぱり教師には見えない彼のスーツ姿に笑いを堪えながら、「あたっ、あたしの教室ってどここ?」なんとか言葉を繋げた。


 我慢。我慢だあたし!


 見たら笑ってしまいそうだから俯いてるけど上から強い視線を感じる。


 黙っていれば、コウは「……二階にあります」とだけ言って案内してくれた。





「──意外とゴミとか落ちてないんだね」



 有名な不良高校だから、壁に大量の落書きがあったりタバコの吸い殻が落ちていたりと汚いイメージだったんだけど……


 一階も二階も綺麗だ。ゴミだって一つも落ちていないし。



「まぁ、生徒には綺麗に使えって言ってあるので」



 それだけで?と聞こうとしたけど何故だかすぐにわかった。


 ヤンキー座りで廊下にたむろっている生徒たち。


 あたし達が通る時はサッと道を開けてくれて「おはようございます!」と元気に挨拶までしてくれる。



 彼、彼女らの視線の先には────コウ。



 ……何やったんだよお前。