「……あたし、何かした?」


「あ、違う違う! その……ちょっと女の子が苦手で」



 気にしないでね、と深緑髪が慰めてくれた。


 ……それは早く言って欲しかった。じろじろ見ちゃったじゃん。



「金髪は知らないよ。銀髪は……そもそも顔が見えないからわからないけど」



 そう伝えれば、「おい輝!」と赤髪が叫んだ。


 『テル』と呼ばれた銀髪はなかなか起きず、それを見かねた赤髪が無理やり引っ張る。


 そしてしぶしぶ立ち上がってこちらへ来た。




「……ん?」




 まぶたを何度も擦ってはパチパチと瞬きをする目の前の男。


 陽の光を浴びて輝く銀色の髪に、人間離れした彫刻のような美貌。


 すべてのパーツが完璧で、その吸い込まれそうな漆黒の瞳は父さんを連想させた。



「……」


「……」



 じーーーっ、と。



 穴が開くほど見られている。


 それなのにずっと無表情だし何も話さない。


 何か言われるのかドキドキして待っているなか、記念すべき最初の一言が────




「お前、どっかで会ったことないか」




 ……よくある口説き文句かな。