「えーと、……誰?」
髪色について考えていたら、深緑髪が困惑しながらも優しい声で尋ねてきた。
いや、答えるのはぜーんぜん問題ないんだけどさ。
「……そろそろ放してくれない?」
まだ赤髪に胸ぐらを掴まれている。
この状態、結構苦しいから早く手を放してほしい。
「あ、茜!? 何やってんの!」
今更気づいたのか、深緑髪が目を丸くして『アカネ』と呼んだ赤髪の腕を叩く……というか殴る。
それと同時に手が離れ、ようやく息がしやすくなった。
「こいつがドアを、「本当にごめんね!」
赤髪の言い訳を遮って、深緑髪が頭を下げる。
「え、いや元はと言えばあたしが悪いし……」
「それでも本当にごめん! 怖がらせちゃったよね」
…………怖がらせる?
心配そうな顔でこちらを伺う彼。
そうか。急に男に胸ぐらを掴まれたら普通は怖がるか。
「う、うん。さっきは本当に怖くて怖くて──」
「……いきなり何言ってんだよ。真顔で放せとか言ってたじゃねェか」
「ほーんと。肩まで震わせちゃって、演技うまいんだな〜?」
「……」
あたしの渾身の演技は、あっさり見破られてしまった。



