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「──ッは、はぁ……! てめぇ、っマジで何なんだよ!!」
途中からは三人がかりで襲ったのに、どの攻撃も簡単に避けきった奴を睨みつける。
それに対して、そいつは呑気に黒マスクを外し困ったように息を吐いてから────急にあたしらの方へ歩き出した。
女子トイレで適当に被せた金髪のウィッグ。風に吹かれてその長い髪が靡くたびに、生え際から元の黒髪が現れる。
長髪が鬱陶しかったのか、そいつは歩きながら片手でウィッグを掴み、バサッと雑に地面へ投げ捨てた。
ただそれだけの動作から感じるそいつの“圧”。
相手は一般人のはずなのに、距離が縮まっていくにつれてなぜかあたしは後退していた。
「……っ!」
とん、背中が壁に当たった。
気づけば立場が逆転していて、それでもまだそいつは距離を詰めようとしてくる。
「な、何よ!」「こっち来んなっ!」
両隣にいる二人の叫び声でも止まらない。
一歩、一歩、また一歩。
着実に近づいてくるそいつに気圧されて、叫んでいた二人がその場にへたり込む────そこでようやく、足が止まった。
けれどほっと、無意識に俯いて安心したのも束の間。
──ダァンッ!!
唐突な出来事に、一瞬息が止まった。
あたしの顔の真横スレスレを突いたそいつの片足。
はっと浅く息を吐き出し見上げた先で────視線が、ぶつかる。
「なぁ、どうなってもいいの?」
そう言って、そいつは笑った。


