「真琴!!」
最後に屋上に現れたのは藍。
真琴以外はあたしを探しに行ったと聞いていたが、久しぶりに会った彼はあたしに目もくれず真琴の元へ駆け寄った。
以前のような取り繕った笑顔はなく、「何もなかったか?」と本気で心配した顔をしている。
「……なぁ、無理やり近づかないって約束したよなー?」
真琴の無事を確認して、藍はようやく隣にいるあたしに目を向けた。
元に戻ったゆるい口調と笑み。けれどその冷たい眼差しには、はっきりと敵意が籠っていた。
「あ、藍! ちげーんだ!」
真琴が焦ったように否定して、あたしの制服の袖を掴む。
誰かが息を呑む気配がした。
藍は口には出さなかったものの驚きを隠せないようで、再び笑みを消して固まっていた。
「姫を受け入れるって自分で決めたのに、今までずっと避けて心配かけてごめん」
そんな周囲の様子は気にせず、真琴は言葉を続ける。
「まだ駄目なことはあるけど、八永となら話すことも近くに行くことも平気になったし、これからは“姫”としてちゃんと向き合っていこうと思う。
────“女”に怯え続ける人生はもう嫌で、少しずつでも今の自分を変えていきたいから」
そう言い切った彼の瞳には、強い決意の光が宿っていた。


