「ここか」



 立ち入り禁止の看板が置かれた、屋上のドアの前に立つ。


 暁の“戸締まりを確認したら帰っていい”という言葉につられて来たものの、なんだか不安になってきた。


 屋上は理事長室の一つ上の階なんだから自分で行けばいいのに、なんであんな必死に頼んできたんだろ。それに、立ち入り禁止にしている場所の戸締まり確認って必要なくない?


 暁の本当の目的は何なのか……ま、確認したらわかるかもな。


 そう考え、思い切ってドアノブをひねり押してみたら、スッと普通にドアが開いた。



 ──ゴンッ!


「い”っ」



 あれ、鍵がかかっていない……?




「っおいテメェ! 何しやがんだよ!!」




 ガシッと誰かに胸ぐらを掴まれた。


 身長差のせいか一瞬だけ体が浮く。


 見上げると、自分の頭を片手でさすっている男と目が合った。



 少し黄みがかった赤髪に、切れ長の黒い瞳。


 中性的で綺麗なその顔立ちは、荒々しい口調とまったく合っていなかった。