「どこに行くつもりなの?」

マフラーから出るバイクの音が結構うるさいから、自然と大声になった。

「暑いからさあ、涼みに行こうぜ!山に行こう!」

「山?六甲山行くの?」

私たちの住む町で『山』と言ったら、『六甲山』が代名詞みたいなものだ。

「おう!六甲山!しっかりつかまってろよ!」

「大丈夫ぅ?二人乗りしたことあるの?」

雅人のライディングはまだぎこちない感じがする。

でも、その大きな背中は、私に大きな安らぎを与えた。

「心配すんなよー。まあ、安全運転で行くからさ!」

雅人は見た目はかなりヤンチャだけど、ムチャはしない。私は安心して、雅人の背中に自分の体を預けた。


私たちのバイクは、一路六甲山頂を目指してひた走った。

途中のクネクネ道は雅人を四苦八苦させたが、私たちは何とか無事に山頂に到着した。

「やっぱ山の上は涼しいな!」

「風が気持ちいいねー!」
展望台からは私たちの住む町が一望できた。

「あそこに見えてる半島みたいなやつどこなのかなあ?」

「あれは和歌山」

「えーっ!?そんなに遠くまで見えるの?」

「ああ、関空から飛ぶ飛行機とかも見えるって、兄貴が言ってたぜ」

私たちは関空があると思われる場所を必死に探した。

その時、遠くに見える海から飛行機が飛び立つのが見えた。

「あそこが関空だ!」

「わあっ、すごい!本当に見えた!」

はしゃぐ私の肩を、雅人は優しく抱き寄せた。

「夜に来ると夜景がすごい綺麗なんだって」

「じゃあ、今度は夜来ようよ」

雅人はまっすぐ私の目を見て微笑んだ。

「うん!また来よう!」