帰宅する足取りは、普段より歩幅を縮めていた。
 歩きながらも自分のおかれている立場を考え、見つめ直している。

 働かなきゃイケないことはわかっている。生きるために必要なことだし私の今の状況で仕事が頂けるだけでも幸せだ。


 思い描いた夢を実現させることなんて、そう簡単に出来るはずもない。
 言葉で理解し自分に言い聞かせても、気持ちの中では納得出来ずにいる。

「どうしたらいいのだろう」

 心の言葉をつぶやいてしまうほど、困惑してることを自覚してしまう。
 無意識のまま駅を通り過ぎ駅前の遊園地を横目で見つめる。

 遮断機の音が聞こえ立ち止まると、背中を照らす夕日が私の影を映し出していた。
 子供の頃の記憶と変わらない景色を、夕日の光が建物も道も木々達も全てをオレンジ色に染ている。 

 懐かしい。この感じ。

 その光景があまりにも素敵に映ったので、心が安らいだかのように思えた。
 私はそんな景色の中、昨晩植物を拾ったベンチの場所に、誘われるかのように足を運んでいた。

 ここを利用する人は、犬を連れて散歩する人や年配の方しか見かけず、慌ただしい日常とは別世界のようだ。
 
 一本隣のバス道りとは違い、この道はゆっくりと時間が流れているかのようだった。 
 ベンチに座り人気のないことを再確認すると、途中で購入した缶コーヒーの栓を開けた。
 一口飲み込み軽く息を吐くと、昔の印象から変わり果てた会社のことを思い出していた。