「良いからよく見てなさいよ」



うまく言葉を受け取れないあたしを見て、楽しそうに笑った人に再び腕を引っ張られて歩き出す。


「あらあ〜。コータきゅん寝てるわ」


引っ張って連れて来られたソファには、横になって気持ち良さそうに眠る灰色の姿。



「起こし甲斐あるわぁ」


舌なめずりをしながら灰色にジリジリと近付いていく光景に自分が近付かれている気持ちに襲われて、思わず後退る。



「コータきゅん、起きないと食べちゃうわよォ?」



目を見開いて今にも灰色を襲いそうなオカマのギラついた目が怖過ぎて、近くの柱の後ろに隠れた。



「起きないって事は食べていいのねェ?」



ウットリとしながら灰色の頬に手を添えたその瞬間。



「…ん。っはぁ?ちょ、気持ちわりい!おっさん近寄ってんじゃねぇ!」



灰色が目を覚ましてオカマのお腹に重たそうなパンチをひとつ。



「ヴッ」



オカマは呻き声を上げながらその場に崩れ落ちていた。


崩れ落ちる様子を見た灰色は、若干顔を青くしながらも安堵した様子で息を吐きだしていた。


つられてあたしも灰色が襲われる姿を見なくて一安心していれば。



「つーか終わったのかよ。ブスは?」




ソファからちゃんと起き上がった灰色が身体を伸ばしながら辺りを見渡してあたしを探していた。