「コータきゅんもだけど、タカきゅんもマオきゅんもあんたを本気で嫌ってる訳じゃないと思うわよ。タツきゅんは、あんたじゃなくて"女"が嫌いだけどね」
頭にタオルが巻かれた後、ゆっくりと手を引かれてカットする場所に誘導される。
「あんたは1人じゃないでしょ」
少しは頼ってみなさいよ。そう言うオカマは優しく笑ってて。
"あの出来事"が起きる前の。大好きだった兄の笑顔をどうしてか思い出した。
「──」
優しく笑ってて、あたしの名前を大切に呼んでくれてたあの頃。
今はもう、あの頃の笑顔は見れない。名前だって、兄に呼ばれると"あの時"を思い出してしまうから呼ばれたくない。
「友達。1人くらい居んでしょ?」
あたしの後ろに立って、髪を触り出すオカマの問い掛けに頷く。
あの子だけが。あの子だけが今のあたしの支え。
