「な、んでもないんです」


いつの間にかあたしを押さえつけていた手が無くなっていたので、あたしはゆっくりと立ち上がる。


昨日受けたの暴力に、今日受けた暴力の痛みが上乗せされている。脂汗が浮かぶ程痛いけど、そんな事今はどうでもいい。


これ以上迷惑は掛けられない。



「大丈夫ですから。気にしないで下さい」



そう言ったあたしの言葉に彼は眉間にシワを寄せる。


あぁ、もう。
あたしこの人が一番苦手かも知れない。


罵ってくるわりに何故かいつも気に掛けてくるし。曖昧な優しさに自惚れそうで怖くなる。


お願いだから優しくしないで。


あたしは、あなた達にあたしの兄によって押し付けられたお荷物なのだから。



ずっと、ずっと、あたしのこと嫌ってて。そうしたら期待もしなくて楽だから。



「だから、戻りましょう」



校舎へと戻ろうと一歩足を踏み出せば、


「っ、」


激痛が走る身体がその場に崩れ落ちる。