教室に辿り着く頃にはチャイムも鳴り授業が開始されている。
龍神の人も慌ててないし探されなかった事に、やっぱり安堵と寂しさが交差する。
矛盾から抜け出したい。
「──であるから。戻って来たのか、さっさと席に座りなさい」
教室に入ると禿げたおじさん先生の古典が始まっていて座るように促される。
大人しく席に座って授業を受ける。
いつも通り、ただやり過ごすその時間はゆっくりと流れて。
鉄の味の気持ち悪さをやり過ごして、つまらない授業をやり過ごして。
気付いた頃にはお昼休みの時間になっていて。
「本当に、可愛いね」
甘い声が耳に入ってきて今日の迎えが誰か分かる。
「こんなに可愛らしい人を、なんで今まで見つけられなかったんだろうね。自分が愚かだと気付かされるよ」
砂を吐くような甘い台詞に呆れる。
鞄を持ってその台詞を空気を吸うように吐き出している金色の隣を通り過ぎる。
「ちょっと君。待ってよ」
「気にしないで続けて下さい」
あたしを静止する声に気にしないでと告げるとあたしは溜まり場へと歩き出す。
「なにあれ、感じわるーい」
「迎えに来てもらってるくせに、何様のつもり?」
「花澤さん、早く解放されるといいですね」
「ほんと、龍神の皆様が可哀想」
花澤さんと声を掛けられた金色にはじめて名字を知る。
昨日は灰色の苗字を知ったし、どうでもいい情報ばかり得ている気がする。
