夏に会ったケンジは、一回り大きくなった。

同級生だった裕美の死を乗り越え、また手の届かないところにいってしまった。


あの溢れんばかりの球を投げていた彼は、大学で野球はやらなかった。

自らの兄と、大学で投げあいをする姿を見たかった土門は、残念だった。


しかし、昨日の電話。

「オレ、野球部に入ったんだ。大学2年にもなって。」


嬉しかった。

素直に嬉しかった。


あの溢れんばかりの才能が、埋もれてしまわないことが。

あのまっすぐな目が、再び前を見据えるのが。


友たちは、生き生きと生きている。