卒業式。


桜散る坂道の上で、自分の高校生活も終わる。

一体この三年間、自分はこの高校の中で何が出来たのか。


兄の剛速球に負けない直球を自分に向かって投げてくる、投手のケンジを懸命に受け続けた。


自分の才能の限界に挑戦し、殻を打ち破ろうともがいてきた。


しかし悔しいかな、兄やケンジのような溢れ出る才能など自分にはなかった。

兄やケンジのように、大学にいけるほどの頭などなかった。


(野球、やめようかな。)

土門はそう思った。