「この人、さっき電車に飛び込んだんだよ!」

「え・・・?」

サトミの頭の中は真っ白になった。


あの高校時代、優しく、厳しく、そして頼もしかった背中と、写真に映る笑顔で駅員が言う人物が結びつかない。


「え・・・。・・・え・・・。」

「あんた、早く行ってあげてくれ!つつじ台第一病院だから!」

「は、はい・・・。」

サトミは押されるようにそう答えると、写真を手に持ったまま走り始めた。


どうして彼はここにいるのであろう。


彼は私の名前も知らない。

住所も知らない。


なのに、自分の住むアパートのすぐ傍の病院に運ばれているという。

駅から線路に飛び込んだという。


わけがわからない。

何がなんだか、さっぱりわからない。


駅前の華やかな喧騒に苛立ちながら、サトミは走り続けた。