しばらくして──静かに勉強をしていたわたしたちの耳に颯くんの声が……
『響ー!!わかんねー!!早く来い!』
わたしは手を止めて響くんを見やる。
すれば響くんは呆れまじりに頬杖をついた。
「自分から来るものでしょ普通……」
「……ま、まぁ。行かなくて良いの?」
「はい、放置で」
ひとりで騒ぐ颯くんをこのまま放っておいていいのかな。
それとも一緒に勉強しちゃえば、わたしも小鳥遊くんも一石二鳥じゃ……響くんにはちょっと大変な思いさせちゃうけど。
「颯くん途中からうるさくなるんで一緒には勉強したくな──」
『きょー!!早くはやーく!』
「ほら……やっぱり放置はダメっぽいよ?」
「……ほんと颯くんバカ!」
勉強道具一式をまとめて苛立ちとともに立ち上がった響くんは、
「琉衣さんはいつでもどうぞ。教えながらでも僕も集中できましたし」
「うん、ありがとう」
わたしに笑いかけて部屋を出ていった瞬間、
"うるさい!"と颯くんに言っていた。
「……思いの外進んだし、注意しなきゃいけない
とこもわかったから。響くんと勉強して良かった」
他の教科を疎かにするつもりはないけど、数学の赤点はまぬがれそうだ。



