「……ご、ごめん。おどかすつもりはなかったんだけど……」



顔を少しあげて、小さく頭をさげる雪さん。
そんな雪さんに響くんは歩み寄る。



「こんな夜中に何してたんです?……ってお風呂?」


「シャワー浴びて、部屋に戻ろうとしたら誰かおりてきたから……静かにやり過ごすつもりが声出ちゃって。……顔を見せるしかないかな、と」



携帯を手にしている雪さんに、響くんはなるほど……と、納得した様子で目を伏せた。



「それで……自分の顔を暗闇の中で照らしたら、あの悲鳴が、ね」



「顔だけって怖いだろ普通!」



「……君もごめんね。初対面の人にこんなめにあわせて」


立ってわたしに謝る雪さんに、わたしも慌て立ち上がり頭をさげた。



「わたしこそ、あんな驚いてごめんなさいっ」


「いや俺が悪いから」


「でも……」


「はいはい、一旦ストップしましょ」



響くんが手を叩いて、場を制す。



「夜中なんで、とりあえず自己紹介くらいにして、寝ないとでしょ?」


ごもっともだ。

わたしはずっと背中を擦ってくれた小鳥遊くんに
お礼を言って、階段をおりると雪さんに向き合う。


「改めて、小柳 琉衣です。小鳥遊く……颯くんと同級生です。宜しくお願いします」


「俺は小鳥遊 雪……高三です。小柳さんのことは村田さんや二人から聞いてた。こちらこそ、宜しくお願いします……」