――眠れない。





響くんの行動に今になって動揺しだしたというか……

目を瞑ると、抱き寄せられた光景が浮かんでしまう。



カチッカチッと、時計の秒針が早く寝なきゃと思うわたしの耳には、いつもより大きく聞こえてくるし。

寝返りをうっては、また反対に寝返りをうつ。


それの繰り返しで、時計に目をやれば深夜の二時を回っていた。



「どうしよ……全然、眠れない」



起き上がって髪を掻きあげ、仕方ないからトイレにでも行こうと、わたしは部屋を出た。




暗闇の視界に目を細めながら、壁伝いに階段の方へと歩いていく。



……はじめてかも、ここに来てこんな寝付けないの。


そう思い、階段をおりようと手すりに手をかけて暗いため一段ずつゆっくり下っていく。

半分をおりた矢先──







"へっ……"







「え?」



わたしの……少し下の方から、声がした。