小鳥遊くんはキッチンに向かい、すぐまた戻ってきた。
「これやるよ」
「これって……」
見覚えのある――チョコレートの缶だった。
「え、とっといたの?いつの間にかなくなってたから、てっきりわたし捨てたのかと」
缶を受け取ると、小鳥遊くんはまた隣に座った。
「いや、いつもは捨てたりするんだけどさ。お前がチョコ食った時、缶綺麗とかなんとか言ってた気がして……とっといてやった」
「……ありがとうっ。もらえると思ってなかったから嬉しい!」
「ふうん……そいつは良かった」
「こんなに可愛い缶、何いれようかなぁ……」
天井にかかげたり、蓋を開けたりしてわたしはあぁでもない、こうでもないと迷っていれば、
小鳥遊くんの視線を感じた。
「ん?」
「……本当にお前の幸せスモールサイズだなって思って」
「え?そりゃ御曹司さんに比べたらわたしなんか……」
「そういう意味じゃなくて……その」
口ごもる小鳥遊くんは、急に立ち上がってわたしに背を向ける。
「……悪くないなって思わなくもないな、と」
「……え?」
声が小さくて聞こえなかった。
わたしも立ち上がり、小鳥遊くんの顔を覗き込んむ。
「小鳥遊くんごめん、もう一回――」
「いいっ!大丈夫だ!か、缶渡したんだから早くお前は眠れ!俺も風呂の準備するからじゃあな!おやすみまた明日!」
とんでもない早口だった……しかも眠れってっ。
ダッシュで階段を駆け上がっていった小鳥遊くん。
「……やっぱりちょっと可愛いって思っちゃうんだよなぁ」
笑いながらわたしも二階へ向かった。



