「颯くんが御曹司バレしたのを悔やんでごめんなさいして、可愛いって言われてた会話です」
「はぁ!?盗み聞きかよ!」
そうだった。
あの時、小鳥遊くんのこと可愛いってつい言っちゃって……じゃない。
聞いてたってどこから?
「ちなみに……どの辺りからどこまで聞いてたの?」
なんとなく、肩を押して離れながらわたしは尋ねれば響くんは普通に離してくれた。
「んー、ドア開けっぱみたいなとこから、御曹司バレはまぁ悪くなかったと思う的なとこまでですかね」
それって……
「丸々じゃんかよ!」
全部聞かれてたと思うと恥ずかしい。
別にやましいとか変な会話はしてないから、いいっちゃいいんだけども。
でも小鳥遊くんは違うようで。
「……お前は何しに小柳の部屋に来ようとしたんだよ」
「さぁ?」
「は?」
「忘れました」
小鳥遊くんのため息と同時に、けらっと笑って響くんは雑誌を手に立つ。
「いいじゃないですか、初日は初日今は今。それじゃ僕はお風呂行くんで」
「いってらっしゃい……」
ひらひらと手を振りながら共有ルームをあとにした響くん。
「なんだあいつ、まじ意味わかんねぇー」
脱力してわたしの隣に座る小鳥遊くん。
未だ缶の蓋を手にしたまま小鳥遊くんにわたしは尋ねる。
「ねぇ小鳥遊くん、その缶の蓋って――」
「そうじゃん!それだ小柳」
「え?」



