お風呂上がり、髪はドライヤーを持ってきたから部屋で乾かせばいいと、肩にタオルをかけてキッチンへ向かった。
「喉かわいちゃった」
夕食に使ったピンクのグラスに、冷蔵庫から出したお茶を注ぐ。
「……っはぁ、美味しい」
人生初の泡風呂。少し長居をしてしまったけど、すごく幸せな気分になれた。
……ちょっと単純かもしれないけど。さっきはネガティブになったりしたのに。
「小さな幸せってやつかな」
ひとり笑って、お茶を手にソファへ行こうとした時──固まった小鳥遊くんがいた。
ナイスタイミング。
「小鳥遊くんちょっと聞きたいことがあ――」
「は」
は?
「は、半径三メートル以内に近付くなっ!」
「えっ……」
それだけを言って、小鳥遊くんは風呂場の方へ走っていった。
泡風呂のこと、聞きたかっただけなのに。
……わたし、何かした?



