「い、いえっそんなことは」
「今も。図書室に誰もいないことを理由にチャンスかも、とか考えてる俺がいても?」
思わぬ発言にわたしが硬直すると、より困った笑みを浮かべた雪さんはそっとわたしの両手を掬った。
「って言ってはみたけど、俺の気持ちが良い方にいくことを願って……今はなんとか抑えとく。沢山考えてくれてるのに、学校でも困らせるって追いうちはかけたくないから」
そう言って、ゆっくりとわたしの両手を離す。
こうした穏やかでふわっとした雪さんの優しさは、頭がいっぱいいっぱいのわたしにとって、とてもありがたく嬉しいもの。
「ありがとうございます。先に帰って、ご飯作って待ってますね」
「うん。おなかすかせて帰るね」
手を振って図書室をあとにし、昇降口に向かいながら冷蔵庫の中身を思い出して献立を練っていた。
こういう思考の時だけは、本当に食事だけのこと考えられるんだけど。
それもほんのわずかな時間だけだ。
──うーん、余ってた野菜と何かで……。



