小鳥遊の名を捨てられる──なんて、言われるとは思ってなかった。それも、響くんから。
わたしは誰かを選んでしまったら、今このシェアハウス内がどうなってしまうのか……くらいしか考えられないというのに。
見据えてる未来がすごすぎて……でも、そこまで考えてくれて、好きって言ってくれているのは……純粋に嬉しいと思っていいもの、なんだよね?
気持ちは嬉しいのは嘘じゃないから。
でもあの響くんが、って驚きが大きい。
「──ぎ、小柳!」
「っご、めん……!ど、どうかした?」
目の前から聞こえた声に意識を戻せば、膨れながらカウンター越しにわたしを見ている颯くんがいた。
「お前、包丁持ちながら固まって何してんだよ」
「え?ごめん!いそぐね」
手元には皮むきが中途半端なじゃがいも。
ずっと持ったままフリーズしていたら突っ込まれもする。
「いや急ぐなあぶねぇから」
「僕のこと考えてました?」
「えっ!?」
飲み物を取りに来た響くんに後ろから言われ、ぼとん、と動揺のあまりじゃがいもを落としてしまった。
「当たりだ。はい、どうぞ」
満足げに笑いじゃがいもを拾ってくれた響くんは、ペットボトルのキャップを開けしめしながらソファへと向かう。



