「そのカレーが、僕はすごく……すごく美味しかった。……リクエストしたオムライスもサラダもクッキーも、全部。毎日美味しいものばかり」
「ほ、ほめてもらえるような腕では……」
「ううん、琉衣さんの作るものはあったかくて、優しい味がするんです。僕の人生の中で一番美味しく感じる、安心できる味」
安心できる味……。
料理は嫌いじゃないけど、すごく得意なわけではない。
それでも、一番料理をしているわたしにとって、そんな風に思ってもらえて、言葉にしてもらえるのはとても嬉しいことだ。
「シェフの作るただ高級で見た目が綺麗な食べ物は、どこか美術品みたいで味がしないんです。それでも美味しいと誤魔化して、自分の必要最低限だけ食べての繰り返し」
だから、と響くんは続ける。
「初日のカレーを食べた時……ちゃんと味がして、心の底から美味しいって思ったんです。……大袈裟って思うかもしれないけど、僕にとって本当の手料理をはじめて知った瞬間だった」
今まで、自分の貧乏さに御曹司である三人がキラキラして見えていたけれど……それはわたしから見たらってだけで、いいことばかりでは決してないんだ。
わたしはお金持ちの生活をしたことがないから執事やシェフなんて憧れしか抱けないけど、良し悪しもあるわけで。



