……御曹司の生活話を聞くだけで、わたしには未知の世界だ。
わたしからすると夢のような話だけど、御曹司側からするとそうでもないのかな。
「執事はともかく、シェフの食事を父も良しとは思ってないみたいなんですが、先代から受け継ぎ、小鳥遊に仕えているシェフなのでその縁を切るわけにもいかず。……雪兄さんたちは分からないですけど、少なくとも僕は村田さん以外の手料理というものを口にしたことはなかったんです」
と言っても村田さんもシェフみたいな食事ですけど、と響くんは苦笑いをする。
シェフの食事なんてわたしからするとまたも夢みたいな話。
だけど、響くんの最後の言葉にわたしは驚いた。
村田さん以外……ということはお母様の料理も……ってことになるから。
「それに、あのスマホ越しのほわほわな母親は料理が壊滅的なので、禁止令が出されたと幼少期に聞いたことがあります。その血筋だから僕たちも料理が出来ないんだと思います」
「そんな、響くんはめきめき上達してるよ」
「それなら、いいんですけどね。……正直、村田さんが一度この家から離れると聞いた時、誰かしらシェフが来るのかと思ってたんです。だけど琉衣さんが来ることになって、引っ越してきた初日、僕は手作りのカレーを食べた」
確か、村田さんが手配してくれていたものの中にカレーがあったからそうしたんだよね。
初日のことは今でも鮮明に覚えてる。



