「素直でよろしい」


何故か小さな拍手が返ってきた。
怒られるかと思ったのに、リアクションは全く真逆のもので。

ただでさえ大企業の社長でありお父様に粗相がないようにと強張っていた体が、ちょっとだけ緊張がほぐれた気がしたというか……。
気は抜かないけども。


「ところで、他に私に言う事はないのか?……雪、颯、響」


「え?何をです?他に隠してることなんて……」
「何も壊した記憶ねぇよ。俺は」
「え、俺?響にはたまに土ついてるって怒られたりしてるけど、特には……」
 

思い当たらないと言う兄弟たちに、お父様の表情はみるみると険しくなって、三人は誰だ誰だと小声で言い合いだす。


「本当にないのか?」


視線の圧に、響くんが"あっ"と声をもらした。


「下心丸出しで琉衣さんのお風呂について行ったこと?とか」
「んなっ!?俺はそんなつもりじゃ──」


「違う」



ぴしゃり。違うと言い張るお父様に颯くんたちは黙り、考え込む。
わたしが何かしたのかと、つい考えてしまうも、呼ばれたのは三人の名前だったからわたしが考えても求められてる答えは出せなそう……。

──五分ほど沈黙の時間が続いた頃、今度は颯くんが"言う事あったわ"と呟きゆっくりと立ち上がった。





「俺……小柳に告った」