「ごめんっ、可愛くてつい……」

「は!?」



正直な気持ちを言わせてもらえば、小鳥遊くんは顔を赤らめた。
可愛いさが増してしまった気がするけど、口にするのはよそう。



「せっかく、俺が悩んで頑張って!決心した果てに言いに来たのに……可愛いってなんだよ……」


小鳥遊くんは、へなっと力が抜けたのか胡座になった。


「……なんも思ってないのかよ」


なんも、なわけはない。


「今ちょうど、中学の時のこと思い出してたんだ。……お坊っちゃんだったりすんの?って聞かれてた頃の」
「……あぁ」


視線を落とす小鳥遊くん。

やっぱり覚えてるものなんだな。


「わたし同じクラスだったから……」
「知ってる。お前も聞いてたの。でもあの頃は仕方ないっていうか……」



……分かる。


御曹司って分かったらわかったで、きっと騒がれるし、噂の的になるかもしれないもの。


「わたしもちょっと驚いてるけど、今まで通り……でいいのかな?」
「当たり前だろっ!」


小鳥遊くんの迷わず頷いてくれる姿に、わたしがさっき思っていた"遠い存在"と言うのが少し薄れた気がした。


「…一応、お前には何度か言おうって思ったかともあったんだ」
「え、そうなの?」