誰もいない共有ルーム。ひとりキッチンに向かうと、残されたもう一つのたこ焼きが目についた。
これって──
おそらく部屋にいる響くんと雪さんは食べたか部屋に持参したかのどちらかだと思うし……颯くんのってことになるよね?
でも颯くんの部屋は暗いままドアが開けっぱだったから居ないと思われる。
共有ルームにも居ないし……。
お風呂?何も食べないまま?
そろりとお風呂の方へ行っても颯くんどころか、明かりさえついていなくて。
こんな時間にどこか行ってるなんて思えないけど、一応と玄関を見てみれば、颯くんの靴がなかった。
え、外!?
さすがにないと思ったせいで余計に驚き、わたしは慌てて外へ出た。
「っ颯く……!?」
だけど、颯くんは玄関前の階段に座っていた。
どこに行ったわけじゃないことに、とりあえず安堵するも、
「……響に、好きにされてんじゃねぇよ、ばか」
腕に顔を埋める颯くんは掠れた声でそう言った。
ばか、という颯くんの言葉にいつものらしさを感じず静かに隣に座れば、颯くんは少しだけ顔を上げてくれた。
「さっきのあれは……その、ギリギリされてなくて……」
近くにいたら、そんなの分からないと思うけど……。
「……それ、本当か」
「本当」
「本当に本当の本当?」
「うん」



