ね。
まさか響くんに……こんな優しい笑顔を向けられるなんて。
"はい。と言っても、僕は誰がいても気にしませんので"
"別に。お礼を言われることはしてないですよ。同じ家に居るのにギスギスされるのは面倒なので"
ましてや、好きって言われることも……ここに来たばかりの頃はこんなことになるなんて全く思っていなかった。
恋路を邪魔しないでって言ってたのも、半分は冗談だって思うことにしてたのに、本当にわたしのこと──
「琉衣さん?」
「っごめん」
手をかざされ、ハッとしたわたしを響くんは笑う。
「その調子なら、しばらくは僕で頭いっぱいみたいですね。……いい子」
「いい子って……」
「膨れないで下さいよっ。可愛いって意味で言ってるんだから」
わたしの膨らんだ頬をしぼませて、ケラケラと笑いながら響くんは立ち上がった。
「今日はとりあえず、気持ちは言えましたし、おとなしくすることにします。アピールは日を改めて、ということで」
部屋の電気をつけて、手を振って出て行った響くん。
眩しさと熱さが相まって、両手で顔を覆った。



