差し出された手。
握るべきか否か……わたしの手がピクリと動いた時、横から来た手に、差し出されていた手が弾かれた。


「仲良くなんてさせねぇよ。あの記事でからかったのがお前らの本質だろ。小柳と仲良くなって俺らに近付こうとって魂胆ならやめとけよ。……俺はコイツ以外相手にしねぇ」

「っ……」


弾かれた手に驚く女子。でもグループ皆が、焦ったように目を泳がせる。


……そういうことだったんだ。

わたしを経由して、御曹司だと分かった小鳥遊くんたちと交流していこうって思ってたんだ。

少しでも、謝ってくれたことに安堵した自分がいたのが嫌。

わたしは女子グループから顔を背けた。


「……これが小柳からの返事だ。二度はないから覚えとけよ」


颯くんの声が、どれだけ低いものか分かる。毎日聞いてる声なのに何倍も低かったから。
パタパタと遠ざかっていく足音に安堵し息を吐き、颯くんを見上げた。


「ごめん、ありがとう」
「気にすんな。まだああいうのがいやがるとはな。……俺がいない時でも何かあれば顔だけでも覚えといてくれよ。対処する」
「……うん」