各々教室へ別れ、颯くんに手を引かれながらわたしは席へ着いた。
ずっと顔は上げられないままだったから、周りの表情は分からない。

周りを見たくないから、いっそ机に伏せてしまおうかと思った矢先──


「琉衣ちゃん」


声をかけられ顔を上げれば、わたしに"彼氏何人いんの?"と聞いてきた女子グループがいた。

また、何か言われるのかとつい身構えてしまう。


こわい、こわい……こわい。


「……な、なに?」


きっとわたしの顔はひどく引きつっている。


「あ、あのさ」


ひとりがわたしに一歩近付けば、前方の席にいる颯くんがこちらを見て目を光らせる。
その視線に彼女たちは気付き、言葉を詰まらせるも、震える瞳はわたしを見据える。



『ごめんなさい!』


──え?


「……記事鵜呑みにして、うちらでからかったから。だからそのごめん」
「小鳥遊くんとか御曹司って知って羨ましいとか思ったり……でさ。家庭の事情とか知らなくてつい言っちゃった」
「ほんとごめんっ。あまり話したことなかったのに余計。だからこれからは改めて友達として仲良く──」