「──うるせぇ!!」
キィン──耳の奥まで響くような声が、体育館全体に広がる。耳をふさぐ子もいる中、わたしはまっすぐ颯くんを見つめた。
「朝からごちゃごちゃごちゃごちゃ騒ぎやがって。新聞部がつくった記事がなんだ。気になるなら全部──"俺ら"が答えてやるよ」
俺……ら……。
まさか、そう思った時にはもう……
「ええ、僕もお答えしますよ」
「俺も答える」
両サイドの階段を上がってきた響くんと雪さんが見えた。
颯くんのマイクを通された声が、小さくても聞き取るには十分で。
またざわつき出す声に、颯くんはまた口を開く。
「新聞の通りアイツと一緒に住んでるし、俺ら全員小鳥遊グループの人間であり、兄弟だ。そこは認めてやるよ。けどな」
「僕たち三人の誰かと付き合ってるとかでは、今はないんですよ。後々、僕がもらいますけど。……だから、彼女に意地悪とかしないで下さいね?したら僕何するか分からないので」
言葉とは裏腹に、マイクからは響くんのふふっと笑い声が入った。
「えっ……響そんな堂々と言っちゃうの?」
「ん?雪兄さんも何かあるなら今のうちに言えば?いい機会だよ」
「え、えっと……とりあえず、騒ぎ立てるのはやめて欲しい、です。記事には事実もあったけど、ネジ曲がったことも書かれてたから。俺はいいけどあの子が好き勝手にされて何か言われるのだけは、ゆるせない」
……いつもの雪さんではないみたい。
ステージ上で堂々と放たれた言葉が、少しずつわたしの胸に染み込んでいく。
「言えるじゃないですか。雪兄さん」
「なんとか……」
胸を撫でる雪さんの背中を響くんは軽くたたく。



