「……雪さん、珍しいですね。髪結んでるの」

「ああ……ピアノ、弾く時は髪を結ぶんだ。特別な理由はないんだけど。その方が鍵盤見やすいかなって……もしかして変?」

「いえいえ!とんでもないっ。とっても素敵です」

「なら良かった」


柔らかい笑みを浮かべ、雪さんはまた途切れ途切れにピアノを弾いていく。


一緒の家に居てもあまり……こうして二人だけで話す時がなかったから、これもまた新鮮に感じられる。

料理のことは置いといて、颯くんや響くんに比べて物凄く落ち着いてるし、マイペースなところがあるけど、改めて話すとやっぱりお兄ちゃん感っていうのかな。
そういうものを感じる。


「……そういえば、俺がピアノ弾けるの知ってたの?」

「え、ああ以前に颯くんから習い事してたんだって、ちょこっと聞いてたので」

「そうだったんだ。とは言っても、俺はまともに一曲弾けないんだけどね」



──蝶々とかに気を取られていたから……ってことかな……でも聞かないでおこ。