「アパートの最終チェックと……抜き打ちで坊っちゃま方の様子をと思ったものですから」



「そんなの聞いてねぇぞ」

「抜き打ちってそういう意味でしょ。……ほんと颯くん馬鹿すぎ」

「聞こえてっからな」



同じようなやり取りに何度も笑みを見せる村田さん。
今度はいつ会えるのかわからない。
だから、今のうちに──


「琉衣さん、後の事は村田にお任せ下さいな」

「はい……」


わたしが口を開いたので察したのか、村田さんはそっとわたしの肩に手を置いた。


「坊っちゃま方のこと、宜しくお願いいたしますね」


控えめに頷けば、村田さんはわたしの頭を撫でると、ドアを開ける。
バタバタと、村田さんの見送りをしようと三人が追うのを、さらに後ろからわたしは見守った。