「……お顔をおあげくださいな」
優しい口調に、わたしはゆっくりと頭を上げる。
「村田も琉衣さんをここにお誘い出来て、心より良かったと思っておりますよ」
「……村田さん」
「坊っちゃま方の雰囲気も顔も、柔らかく、明るくなられましたからね」
「俺は最初から明るし表情豊かだけどな!」
「変わりにポーカーフェイス出来ないですけどね」
「あん?」
「何」
またか──
「……変わらない所もあるようですが」
二人のやり取りに咳払いをする村田さん。
村田さんの前でも、やっていたんだな……。
「そして雪坊っちゃま」
「は、はいっ……」
肩に力が入り背筋を伸ばす雪さんの頭に、村田さんはそっと手を置いた。
「……おこもりの回数も減り、人見知りも改善されたのではありませんか?」
「る、琉衣ちゃんのおかげ?かな?」
「ふふ、きっとそうでしょうな」
──雪さん、嬉しそう
静かにパァッと明るくなっていく表情に、わたしも嬉しくなってくる。



