ガコンッ── 高級な床だから、石鹸一つの音がやたら響く。 だけど何事もないよう、拾い上げた時── 『大丈夫か小柳!』 『滑ったんですか!?』 『ちょっと2人とも!中はだめッ』 慌てた声がすぐそばで聞こえた。 「大丈……えっ!?」 浴室の透明なモザイクドアの先に、影が動いていて、声の近さの意味が分かる。 「な、何で入ってるの!?」 「鍵開いてたからな!」 「僕と颯くんしか入ってませんよ」 「いやいや!バックバック!戻って下さい!?石鹸落としただけなので!」