それなら安心してほしい。
わたしは多分この学校で一番釣り合わない人間だと思うから、大丈夫だと。
「颯くんとは、付き合うことはないよっ」
「そ、そうなんだね……!」
うん、やっぱり嬉しそう……
颯くんの好みとかわからないけど、心の中で応援しとくしかないかな。
ピィ──!!と笛が吹かれれば、男子のチームが圧勝していた。
「さっすが男子共ー!!」
「いいぞ男子ー!!」
わたしも立ち上がるチームの子達と同じように声をかければ良いのだけど……
久々にした恋ばなのような会話に、何故か違和感を覚えた。
自分のなかでうまれた違和感だけど、何か、とまではわからない。
それなりに仲良くしていた颯くんに彼女ができる可能性が芽生えたから?──自問自答してみようにもピンと来ない。
──わからないものは仕方ないか。
今わたしが本当に悩むべきはアパートの件なんだから。
最終の片付けが終わって、村田さんに引き継いだら安心すると思ってたのに、
まだ名残惜しさが消えなくて……
学校でも家でも、ふとアパートで過ごした日々が脳裏に過ってしまい、目の奥が熱くなる。
いい歳なんだから時と場所を考えなしに泣いたりはしないけど。
あのアパートが跡形もなくなくされる事を思うと、胸が重くなる。
──……駄目だな、こうなるとネガティブタイムはじまっちゃう。



