逃げ道を探すには遅すぎた

リビングで会った時の混乱していた二人とは今はまるで別人みたいだな。そんなことを考えながらお冷やを飲む。

タイムスリップしたことを二人が混乱していたのは本当に数分だけだった。非現実的でまるで小説みたいな出来事だけど、シャロンもウィリアムもとても賢いから(年齢を聞いたら二人とも八歳だった)、周りに置かれている見慣れないものや街並みを見て、タイムスリップという話が本当だと信じたみたい。

『雫、俺これ食いてぇ!』

『僕はこれがいいです』

二人とも頼む料理が決まったみたいだ。日本の飲食店は日本語でメニューは書かれているけど、写真が載せてあるから言葉がわからなくても料理が選べるのがいいところだと思う。海外じゃ料理名が書かれているだけらしいからね。

『シャロンがハンバーグでウィリアムがオムライスね。OK!』

タブレットを操作して注文していく。当然タブレットなんてない時代に生きている二人は、興味津々といった様子でそれを見ていた。